R3予備論文(民実)答案構成

民実2.7ページ

準備書面問題以外は省略

①2段の推定。印影が被告の印章によることは争わないが、1段目の推定が働かないことを反証する。そもそも1段目の推定の根拠は、印鑑が厳重に保管されていて他人が盗用できないこと。三文判でも厳重に保管されていて他人が盗用できなければ1段目の推定が働きうるが、本件では来客が利用する居間に保管されていて、頻繁にやってくるXは保管場所を知っていたはず。留守を預かる機会に盗用することは十分可能だった。そのため1段目の推定は働かない。本件契約書は真正に成立したものといえない。

②そうだとすると、本件では賃貸借契約書が存在しないことになるが、貴重な不動産について短いとは言えない期間を賃貸するのであれば処分証書たる契約書を作成するのが通常である。契約書の存在しない本件では、契約そのものがなかったと考えるのが自然。

また、もし契約があったとすれば、当初は賃料が支払われて契約後しばらくしてから不払いが発生する、という経緯をたどるのが通常。本件では7月末頃に5万円の支払いがあるが、賃料とは異なる額であるから賃料債務のために支払われたとは考えづらい。賃料支払いは契約締結したとされる時期の当初から一切なかったことになる。そうだとすると契約自体がなかったと考えるのが自然。

③よって契約締結の事実はなかった。

〜現場で考えたこと〜

準備書面問題が一番配点高いので、ここで勝負する。枠組みが命なのは、2019過去問と類似。

今回の枠組みは、①2段の推定が働かない→②処分証書の不存在→③契約の不存在、にしてみた。

この枠組みは、2段の推定が働く→処分証書の存在(形式的証拠力あり)→契約の存在(実質的証拠力あり)という典型的枠組みの裏返し的発想。完全に現場判断なので枠組みとして妥当なのか自信ないが、『契約書がない』という被告の謎発言が誘導になっていると信じて乗っかる。

今回は名義人の三文判による印章であることを争っていないので、1段目について反証しなければならない。苦しい。頻繁にY宅に訪問していた事実は争いがないのでこれを使うしかない。

別居うんぬんとか5万円がショッピング費用の立替うんぬんは、当事者間で争いがあるので弱い。リスキーだが、あえて書かない判断。

R3.7.27追記

伊藤塾分析会を踏まえて〜

予想評価B

今年の準備書面問題の難しさは、1段目の推定に対する反証は被告が責任を負うが、反証成功によって請求原因事実(賃貸借契約締結の事実)が認められなくなる不利益を原告が負う、という構造を示さなければならなかったところ。

大きく外したわけではないと思うが、構造の指摘が甘かったため評価が伸びにくいと予想する。