R3予備論文(商法)答案構成

商法3.5ページ(2+1.5)

設問1

①Cが正当な代取であるという主張

非公開会社で取締役役会設置会社でもある甲が定款で代取の選定権限を株主総会にも与えている。この定款は有効。なぜなら295Ⅱは取締役役会設置会社の株主総会が決議できる事項を文言上限定していないし、362Ⅱ②③の定める取締役会の代取解職権限が弱まるわけでもないので。

そして、800/1000株所有のAが了承しているので、Cを代取に選定する有効な株主総会決議があったものと考えられる。株主総会招集手続欠缺は取消事由831⑴①に過ぎず、決議の有効性に影響しないか、裁量棄却831⑵が認められる。

よってCは正当な代取であり、その行為の効果は甲会社に帰属する349。

②仮にCが正当な代取でなかったとしても表見代取であるという主張

354の名称、善意の第三者は認められる。Bは何も知らなかったので、黙示的にも『付した』とは言えないとも思える。しかしCが副社長を名乗ることについて800/1000株を有するAが黙認したので『付した』といえる。

よってCの行為の責任は甲会社が負う。

設問2

不当利得に基づく。『法律上の原因なく』といえるか。

①報酬等についての総会決議がないという甲社の主張に対して

報酬等について

労金も含む。確かにBは退任してるが先例として将来の取締役のお手盛りにつながるので趣旨妥当。

具体的な算定方法の決議について

労金は報酬と異なり、退職するのが1人しかいないこともあるところ、総額を決定すれば当該1人の慰労金が分かってしまう。慰労金額を知られたくないという退職者のプライバシーに配慮するため、総会決議は、総額の決定ではなく、推知できる基準に従って支給するという黙示の合意で足りる。本問では、Aの慰労金支給の前例があり、内規に従って慰労金を支給するという黙示の合意があったと考えられる。

よって361決議があり、『法律上の原因なく』といえない。

②仮に①決議が存在するとしても、これを撤回する変更決議があるという甲社の主張に対して

900/1000株式を所有するCの決定により①決議を変更する株主総会決議があったと考えても、①はすでに慰労金を支給する契約の内容となっていて、一方的に変更はできない。

よって、慰労金支給にかかる当初の361総会決議が存続している。『法律上の原因なく』といえない。

〜現場で考えたこと〜

問題文1段落目で非公開会社、取締役会設置会社、と来たので、総会で代取選定する定款の有効性に関する最新判例を想起。そのあとで定款の記載が実際に出できたので確信に至る。それでも、どこで論点化するのかが難しい。。

設問1は代表行為の効果帰属や表見法理。設問2は不当利得。どちらも民法的。民法的思考パターンはH28と同じ出題形式。最新判例が登場するのもH28と同じ。

354について、本問では908の出番がないのであっさり短めに処理。

報酬も出題予想内だが、何を書けば良いか難しい。。

R3.7.25追記

伊藤塾分析会を踏まえて〜

予想評価B

R3商法は『機関の役割』がテーマだった、と強く感じるようになった。代取選定は本来なら取締役会の権限だが、定款自治により株主総会でもできるのか。報酬決定は本来なら業務執行として取締役会の権限たが、株主総会の承認が法定加重されている。つまり、取締役会と株主総会の役割分担が2問を通じた問題意識であると思う。

設問1について、定款の有効性と大株主Aの関与について触れた点は間違ってなかったみたい。ただし、召集通知等の手続を欠くにもかかわらず総会決議があったと認定した点は早計だった。結論が不自然なため評価が伸びないかもしれない。

908②を検討しなかった点もどこまで響くか。。

設問2について、慰労金支給の前例があるため黙示の合意があるから、ではなく、Aが一人株主だった時代に内規が作られているから、とすべきだった。

なお、辰巳は判例にならって信義則で処理すると分析していたが、当該判例は一人株主でない状態で内規が作られていたので、事案が異なるらしい。

また、問題文では、死亡したAを相続したCが大株主になっていて、その大株主CがBに慰労金変換請求しているので、支給決議後に不支給とする変更決議の有効性の問題が登場すると考えられるが、この点については伊藤塾からは指摘がなかった。内規に基づく慰労金支給が認められるという立論がそもそも無理筋なのだろうか。。